エリート同期は一途な独占欲を抑えきれない

揚げ物をするときもだけど、油がパチパチ跳ねるのにはまだ慣れない。コロッケなんか一生かかっても爆発させないで揚げきる自信はない。

小麦粉を振り入れ炒めてから牛乳を足し、塩コショウで味を調えていく。

「結構料理するんだな」

隣に並んだ芝浦が、フライパンのなかを眺めながら言う。

「週の半分くらいだけどね。あとは、冷凍食品とかお惣菜で済ませちゃうから」
「でも、レシピ見ないでも作れるくらいには回数こなしてるってことだろ」
「まぁ、ひとり暮らしももう四年目だし」

話しながら混ぜ、とろみが足りない気がしてとろけるチーズを投入する。
それから、さっき茹でたマカロニとじゃがいもを加え、ぐつぐつしてきたのを確認してからコンロを切った。

予熱していたレンジがちょうど完了の電子音を出す。
フライパンの中身をガラス製のグラタン皿に流し込み、上にチーズとパン粉を乗せ、レンジに入れたあとでスタートボタンを押した。

温度は250度。時間はとりあえず20分で設定する。

私がレンジをいじっている間に、芝浦がフライパンやらザルやらを洗ってくれているから、その気遣いに驚く。

「芝浦って、普段から料理するの?」
「たまになら。料理っていうよりも、ただ手を加えてるってくらいだけど。麺茹でたり、米炊いたり、なんか炒めたり」

「へぇ」
「ひとり暮らしだし、みんなそんなもんだろって思ってたから、桜井が案外しっかり作ってるのを知って驚いた」

菜箸を洗いながら言われる。
芝浦が立つと、キッチンのシンクの高さが低く見えた。

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