エリート同期は一途な独占欲を抑えきれない
「嘘ばっかり。誰よりも先に言いそう。さっきだって賑やかだのなんだのって言ってたじゃない」
「あれはただからかっただけだろ」
呆れたように笑った芝浦が、私と同じようにレンジを眺める。
「うるさくても、桜井が立てる音全部が彼氏のためってことだろ。自分のために音立てて頑張ってると思ったら、俺は文句なんか出ない」
向けられた眼差しに、急に甘さが足された気がして息をのんだ。
芝浦が、そんな、微動だにできない私の手をすくうように持ち上げるから胸が跳ねる。
その体温は、私よりも少し高かった。
「でも、ケガされるのは困るけど。やけどとか気をつけろよ」
さっき私が熱いお鍋に触ってしまった痕を探しているんだろう。
私の手のひらを見る芝浦から目を逸らす。
空気が色めきだっているように思うのは、私の気のせいだろうか。
「ねぇ。芝浦、最近なにかあったの? それとも相当仕事にやられてる?」
この空気を壊すように慌てて聞いた私に、芝浦は「なんで?」と不思議そうに返す。
「雰囲気が変わった……っていうか、急に大人びたような気がする」
今まではもっと子供っぽい部分だってあった。
もっと些細なことで口論になったし……少なくとも、こんな風に私相手に女性的な扱いをするような男じゃなかったはずだ。
――そう。
芝浦は最近、私を女扱いしている。
それがなぜなのか、そしてそれは誰が相手でもそうなのか。単純に芝浦がなにかをきっかけに成長しただけなのか。
真相が気になってチラッと見上げると、芝浦は「まぁ、あったって言えばそうかもな」と答える。
手は、ふたりの間でつながれたままだった。
「今まで通りのアピールの仕方だと通じないってわかったから方法を変えた」
やっぱりなにかあったのか。
だから急に接し方が変わったのか、と答えがわかりスッキリしていたところに言われ、眉を寄せた。