エリート同期は一途な独占欲を抑えきれない


自分が部屋を探す側のときはドキドキわくわくしながら内見したものだけれど、立場が逆になってしまえばそこまで楽しいものではない。
もちろん、お客様の希望に叶う物件をドンピシャで見つけることができて喜んでもらえたなんてときはとても嬉しいしやりがいを感じたりもする。

けれど……少し面倒なお客様相手のときの内見は、ただただ無心になり耐えるしかない。

ややこしいお客様と言って頭に浮かぶのはまず小金井さんではあるものの、あの人はまだいい方だ。
10がマックスとした場合、小金井さんは6……いいところ7くらいだろう。それに比べこのお客様は――。

「えー、思ってたのと違うんだけど。本当にここ、八畳あるの?」

どう見ても年下の女の子が不満そうな声を出す。
タンクトップにショートパンツという服装は、先日の私よりもさらに軽装で、その恰好で外出できてしまう若さってすごいなと思った。

記入してもらった資料を確認すると、名前は富所様で歳は二十一。未成年だと保証人が必要になるから、成人していてよかった。
アパレル勤務と書いてあるから、家賃を払えるだけの収入源はあるだろう。

「もちろんございます。きちんとした長方形じゃないので狭く見えてしまうかもしれませんが」
「でも、こんなに狭いとベッドとソファ置いたらそれで終わりじゃん。クローゼットも小さいし、こんなんじゃ私の服全部しまえないんだけど。……ねぇ、もう少し広いところどうにかならないの? あと、ロフトとかあるといいなと思うんだけど、そういう部屋ないの?」

部屋の真ん中に仁王立ちになった富所様が言う。
その顔は不満に満ちていた。

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