エリート同期は一途な独占欲を抑えきれない
営業車に戻り、助手席にドサッと座る。それから車のキーを運転席の座面に放り投げ、ずるずるとシートに沈む。
すぐそこにある天井を眺め息をついた。
灼熱の太陽の下に駐車していた車内はサウナ状態で、本当だったらうんざりするはずなのに、今は気にもならなかった。
このまま溶けてしまいたいとすら思うのだから、完全に疲れ果ててしまっている。生気でも吸い取られたあとみたいだ。
今日の内見は三件。
一件目は〝こんな歳になると孤独死を心配して部屋を貸してくれるひともいない〟と涙ながらに延々と相談してくるおばあさん。
普段、話す相手がいないのか相当な時間引き止められてしまった。知らないおばあさんだけど〝もう生きてるのは嫌だ〟なんてことを繰り返し聞かされ、とても気が滅入った。
二件目に案内した三十代カップルは、とても上品な雰囲気だった。実際部屋を探しているのは彼女で、ひとりじゃ不安だからと彼氏を連れてきたらしい。
年上の方にこんな言い方は失礼だけど、初々しい様子から付き合い始めたばかりに思えた。
そして、そんな彼女のスカートのウエスト部分にはクリーニングのタグが覗いていて……。
同席していた白坂くんには『放っておけば帰ったあと自分で気づきますよ』なんて言われたけれど、そういうわけにもいかない。
彼氏が席を外したタイミングを見計らってこっそり耳打ちして教えると、彼女は眉を吊り上げて『なんでもっと早く言ってくれなかったの?!』とヒステリックな声をあげた。
あれは私が怒られる必要があったのか、今でも納得いかない。