エリート同期は一途な独占欲を抑えきれない
「びっくりした……」
「新発売らしいですよ。桜井さん、そういう系好きでしょ」
差し出されたのは新発売のミルクティーで驚く。
ついさっき、これを買おうと考えていたところだった。
「ありがとう……っていうか、ごめん。本当なら私が気を利かせるべきなのに」
新入社員にこんな気まで回させてしまったことを情けなくなり謝ると、白坂くんは缶コーヒーを開けながら「いえ」と答えた。
「俺はただついて回ってるだけですけど、桜井さんはずっと接客してるし俺の十倍は疲れてると思いますよ。それに、今日のお客様はそろいもそろってアレでしたし。俺だったら早い段階でぶちぎれてました」
涼しい顔で言う白坂くんに苦笑いをこぼす。
「ぶちぎれって……白坂くん、そんな怒り方するの?」
「いえ。大人なので静かにきれるだけですかね。いないものとして無視するとか」
「お客様無視しちゃダメだよ」
そう、少し笑ってから続ける。
「独り立ちするまでには耐性つけてね。いいお客様ばかりじゃないから」
「ちょっと自信はないですね」
「じゃあ、あと半年で自信つけなくちゃ。……まぁ、たった三件の内見でこんなぐったりしてる私が言えることでもないけど」
白坂くんが静かに発車させる。
ようやく効いてきたエアコンにひと息つきながらペットボトルを開けた。
「……ん。おいしい。これ、今日の帰りにコンビニでも寄って買って帰ろうって考えてたんだよね。だからすごいタイミングでびっくりした」
「へぇ。それならよかったです」
そう言い、一度は会話を終わらせた白坂くんが、こちらをチラッと見る。