エリート同期は一途な独占欲を抑えきれない
「あの日は、沼田さんが体調悪そうで、たい焼きにピクリとも反応しなかったんで、どうやって配ろうか悩んでたんですよ。俺、気軽にたい焼き配れるような同僚、社内にいないんで。だから、〝ご自由にどうぞ〟ってメモつけて給湯室においてけばいいいかなと思って持っていったら、芝浦さんと鉢合わせになって」
「そうだったんだ」
「桜井さんのお客様だって事情を話したら、持って行ってくれるって言いだしたんです。そこまでしなくても大丈夫だとは言ったんですけどね。〝どうせ他の用事もあるから〟って」
なるほど……と納得する。
きっと強引に引き受けたんだろうなと予想はしていたものの、やっぱりそこに疑問は残った。
芝浦は、そうまでして仲直りのきっかけを作りたかったのだろうか。
たまにしか会えない友達相手ならまだしも、私とは社内でだって会える。それに、お互いの性格からして、次顔を合わせたら口論のことなんか持ち出さず、なにもなかったように話せばそれでおしまいだ。
なのにわざわざうちまで来るなんて……と、あの時芝浦が言っていた〝アピール〟だとか〝面倒なやつ〟というヒントを思い出していると、白坂くんが言う。
「芝浦さんって、桜井さんのことが好きなんじゃないですか?」
突然の言葉に咳込みそうになった。
ちょうど芝浦のことを考えていただけに、あまりのタイミングの良さに驚き隣を見ると、白坂くんが首を傾げる。
「なんですか? その反応。〝まさか〟とでも言いたそうですけど」
「今、まさにそう言おうとしてたから」
「まさかってなんでですか? 釣り合わないとかそういうことが言いたいなら、桜井さん、普通に可愛いと思いますけど」
私の頭のなかを読んでいるんじゃないだろうか。
そう思ってしまうほど完璧に先読みする白坂くんに、ため息をつく。