エリート同期は一途な独占欲を抑えきれない
「やめてよ、先輩をからかうの」
「いや本当に。見た目も普通に可愛らしいですし。中身も、仕事真面目にこなす上、弁当まで作ってくるから私生活も完璧かと思ってたら、自分にご褒美用意しておかないとダメだとか。たまに疲れてるって気持ちが駄々洩れるところとか、子供っぽい部分もあったりして、アンバランスさが可愛いと思います」
前を見て無表情のまま褒める白坂くんに「ありがと」とお礼を言う。
こんなの言われたら給湯室シスターズあたりはキャアキャア騒ぐんだろう。想像しただけで疲れるのが目に見えていたため、緩く首を振り頭のなかに浮かびそうになっていた映像をふるい落とす。
私が軽く流したのが伝わったからか、白坂くんがこちらに視線を向ける。
「前から思ってましたけど、桜井さんって自己評価低いですよね。別に〝私なんか〟っていちいち卑屈になるわけじゃないけど、自分の立ち位置を相当低く見積もってる」
「そうでもないよ。普通……」
「芝浦さんは別次元にいる男じゃないですよ。桜井さんときちんと同じ地面を並んで歩いてる。そこに恋愛感情が生まれたってなにもおかしくない」
ギクッとしたのは、当たっていたからかもしれない。
言われて気づく。たしかに私は、芝浦をどこか違う世界の男だと思っていたのかもしれないって。
だって芝浦は、周りの女性社員が騒ぐほどの美形で、おまけに仕事だって相当できる。
そんな芝浦が付き合う相手だって、それ相応のひとに決まっている。
だから、私とふたりでご飯を食べたりするのはただ単に芝浦が私と馬が合うと思っているからだと決めつけていた。
恋愛には発展しないただの同僚だからこそ、色々話しやすいだけなんだろうって。
特別扱いされている気はしても、それだって友達の延長線上って部分は変わらない。これが恋愛と路線を変えることはないんだって……そう思っていた。
だから、最近芝浦がどこかおかしいなと気づいても、その理由を考えてうぬぼれそうになっても、それは違うと可能性を塗りつぶしてきたのに……。
そんなことないんだと否定され、一気に気持ちが動揺しだす。