エリート同期は一途な独占欲を抑えきれない
「コーヒーをきちんと頼めたかどうかの確認が必要ですか? 私よりも十年以上長く勤めている吉田さんに? 新入社員でもないのに、わざわざできたか確認すべきだったってことですか?」
どうやら、沼田さんがコーヒーの在庫がなくなる前にと庶務部に発注に行こうとしていたところを、吉田さんに〝自分が代わりに発注しておく〟と言われ、頼んだらしい。
けれどそれを吉田さんは忘れてしまい……ということなんだろう。
問題は、今現在、在庫があるのかどうかだ。
というのも、今日は十時から大手取引先である冴島グループの専務、熊田様が来る予定だ。
月に一度の頻度でうちの部長の顔を見にくる熊田様は決まったドリップコーヒーしか飲まない。
そのため、〝熊田様にはこのドリップコーヒーを出すように〟というのは、仕事のなかでも初めのほうに厳しく言われた覚えがある。
気難しい方で、機嫌を損ねるとまずいからという理由だったから、もちろん、私も沼田さんにも白坂くんにもお茶くみを教えるとき、最初に教えた。
そのへんには売っていないメーカーのものだから、在庫を常に確認しておくようにって。
パソコンを打つ手を止めて、回転いすをクルッと回す。
沼田さんは、すでに座っている吉田さんの隣に仁王立ち状態だった。
隣の席の白坂くんも、私と同じようにふたりに視線を移した。