エリート同期は一途な独占欲を抑えきれない
「そんなに大事なコーヒーだったんならさぁ、他人に頼まずに自分で発注すればよかったのに。俺にはわからないもん。お茶くみはそっちの仕事でしょ。それを俺に押し付けられたって困るよ」
「熊田様は、この部署全体の取引先ですよ。〝こっち〟も〝そっち〟もない。そういう認識だからコーヒーの発注を忘れるんです。そもそもお茶くみを女の仕事みたいに言っている時点で時代遅れ……」
「沼田さん、ちょっとごめんね。それで、コーヒーはもうないの?」
吉田さんがきちんと謝るまで、どこまでも責め続けそうな沼田さんに聞く。
話を聞く限りだと、たしかに吉田さんが完全に悪いけれど、今それを口論しても仕方ない。
止められた沼田さんは、ややふてくされた顔をしつつも私のほうに向きなおる。
「はい。本当なら、先週には届いているはずだったんですけど」
「そっか……どうしようかな」
部長は、上の会議に出ていてまだ席に戻らない。
熊田様はだいたい時間を五分過ぎてから来るから……と時計を見ると、ただ今の時間は九時五十分。
ピンチどころの話じゃなかった。
あと十五分で来てしまう。
熊田様のアポが入っている以上、部長は十時には戻ってくるだろうけれど、そこから相談で間に合うだろうか。
「ねぇ。これ、部長にまで報告いっちゃう感じ? でも、別に俺だけのせいってわけじゃないしさぁ……」
許してほしそうなトーンで言う吉田さんを、遮るように口を開く。