エリート同期は一途な独占欲を抑えきれない

「そういう話は後でお願いします。今、誰のせいかを決めてもどうにもならないので。とりあえず、沼田さんは給湯室に戻ってコーヒーが本当にないか確認してもらっていい? あと、総務部の部長がたまにあのコーヒーを自分用にどこかにキープしてるから、残ってないかも聞いてもらっていい?」

「わかりました。あってもなくても、結果は先輩の携帯に連絡入れます」
「うん。よろしく」

沼田さんが走って出ていくのを視界の隅で見ながら、どうしようかと考える。

何十年と続いている冴島グループとの契約にヒビが入ることになったら、相当まずい。
でも、コーヒーは社内になければもうどうにもならない。他のメーカーのコーヒーで間に合わせたりしたら熊田様は気分を害されるだろうし……と、焦りながらそこまで考えてハッとした。

「そういえば……」

ひとり呟いてから、隣を見る。
白坂くんは、いつも通りの無表情でこちらを見ていた。

「先月、白坂くん、熊田様と話してたよね。部長に呼ばれて……」

応接室に呼ばれて、しばらく三人で談笑していたことを思い出す。
熊田様も部長も声が大きいから、私のデスクまで筒抜けだった。

「そのとき、マンゴーの話してたよね?」
「あー……はい。社長が毎年お中元で熊田様に贈ってるらしくて。熊田様、マンゴーが特別好きだから、それを楽しみに毎年生きてるようなものだって笑ってましたけど」

「たしか、マンゴー味のものだったら手当たり次第買っちゃうって言ってたよね? お菓子でもなんでも」
「そんな話してましたね。コンビニのお菓子コーナーで片っ端から買うって。……それがどうかしましたか?」

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