エリート同期は一途な独占欲を抑えきれない
誰も助けてはくれない。私が決めるしかないのか……。
チッ……チッ……と動く秒針に急かされるように、ええい!と、白坂くんを勢いよく見た。
なにもないよりは、なにかしらあったほうがいいはずだ。
選択肢は多い方がいい。
「白坂くん。駅までの途中にあるコーヒーショップで、ミルクフラッペのマンゴー味、テイクアウトしてきて! これで」
お財布のなかから千円札を二枚取り出して渡す。
数秒キョトンとしていた白坂くんだったけれど、すぐに私の意図がわかったようで、スッと立ち上がり「わかりました」と千円札を受け取る。
走り出した背中に「一応、領収書もらってきて!」と叫んでから時計を見ると、十時まで三分をきっていた。
結果良ければすべてよし、なんてことは恐らく会社において通用しない。
結果成功しても過程にミスがあったのなら、そのミスが二度と繰り返されないよう、当事者たちの意見を聞きルールを決めるなり改善策を出すなりする必要がある。
今回、結果的には熊田様は喜んでくれた。
『今日、帰りに買っていこうと思ってたんだよ!』と、笑顔になってくれた。
けれど、熊田様が帰ったあと、私、沼田さん、吉田さんの三人が部長のデスク前に呼び出されていた。
理由は言うまでもない。
「事情はわかった。……けどなぁ、いくらなんでもあんな……ミルク、なんと言った?」
「ミルクフラッペです」
沼田さんが答える。
「そう。ミルクフラッペだ。それをお出しするっていうのはなぁ」
部長が腕組みをし、難しい表情を浮かべる。
やっぱり、砕けすぎたアイデアだったかもしれない……と反省して口を開いた。