エリート同期は一途な独占欲を抑えきれない
「申し訳ありませんでした」
頭を下げると、隣に立っている沼田さんが「先輩は悪くないじゃないですか」と声を荒げる。
「そもそも、事情は今報告した通りなんです。吉田さんが発注を忘れたのが原因ですし、先輩はどうにかしようと頑張ってくれただけです。部長も席を外されてましたし、他の男性社員は誰も助けてくれなかった。その中で出した最善案でした」
名指しされた吉田さん含め、他の男性社員もバツが悪そうにうつむいたのが視界の隅でわかった。
吉田さんは、さすがに部長の前で責任を沼田さんに押し付けるのはまずいと思ったのか、黙っていた。
それでも、吉田さん本人はまだ一度も謝っていないところを見れば、彼の本音は〝自分は悪くない〟なんだろう。
そういう部分には部長も気づいているようで、吉田さんにチラッと視線を向けたあと、小さなため息をこぼしていた。
「まぁ、今回の件に関しては、先方も許してくれたことだしこれで終わりにしよう。今後は同じことを繰り返さないよう十分気を付けるように。来月に間に合うようコーヒーの発注もしておいてくれ。……それと、吉田。今日の業務後、少し話すか」
お説教だ。
私だけじゃなく、その場にいた全員がそう思ったようで、沼田さんはバレないように小さくガッツポーズしていたし、吉田さんは面倒くさそうに「はい」と力なくうなずいていた。