エリート同期は一途な独占欲を抑えきれない

「沼田さんと話したのはフロア内だし、聞こえてたはずなんだけどね。まぁ……いいよ。もうそういう人なんだって諦めたり割り切ったりしていかないとこっちがまいっちゃうから」

新入社員である白坂くんが見ているのだから、そういう考え方はいけないのかもしれない。
仕事量や負担が公平ではないことを、性格や能力の違いがあるのだから仕方ないと妥協している様子をまざまざと見せつけるのは、指導係として気が引ける。

それでも、今更吉田さんと向き合う気にはなれないし、そもそもそれは私の仕事じゃない。
……というか。そうじゃなくて。

そんなことが話したいんじゃない、とチラリと隣に座る芝浦を盗み見る。

一時間ほど前、待ち伏せされていたことに気づいたときには、ドキッとした。
だって、絶対に先週の水曜日のことで話があるんだと思ったから。

あの時芝浦は珍しく酔って潰れていたけれど、芝浦は酔っている間の記憶は残っているタイプだ。だから、どんなにアルコールが回っていたとしても、あのあとタクシーのなかでどんなに深く寝入ってしまったとしても、あの告白を芝浦自身も覚えている。

先週の水曜日から六日間。
私の頭のなかは、仕事か芝浦との一件かの二択状態だった。

幸い、仕事が忙しいから会社にいる時間は仕事のことだけを考えていられたけれど、会社から解放されてしまえばそうはいかない。

電車のなかでも部屋に戻っても、ご飯を作っていてもお風呂に入っていても、とにかくいてもたっても芝浦のあの告白が頭を占めていた。

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