エリート同期は一途な独占欲を抑えきれない
『好きだ。桜井』
芝浦の声は、そっくりそのまま耳のなかに記憶されてしまっていて、それがふとした瞬間に再生されてしまうから困った。
同時に、あのときの芝浦の熱まで思い出してしまうのは、もっと困った。
〝同期として好き〟という熱量ではなかった。
あのときの芝浦は、同期じゃなくて……男だった。声も、抱きしめる腕の強さも、なにもかもが。
芝浦が私を好きだと仮定すると、これまでの疑問だった態度がストンと落ち、納得できる。それを実感した途端、じわじわと体のなかを得体の知れないむず痒さを伴ったなにかが侵食していくようだった。
胸の奥がむずむずして堪らない気持ちを、この六日間で何度経験しただろう。
そんな症状に耐えながら、これからどうしようと色々考えた。芝浦は……私は、どうしたいんだろうと。
その結果が、芝浦にきちんと言葉の真意を確認するというものだった。
それはなんだか告白の催促のようで嫌だけど、でも、あのままにはしておけない。
芝浦は大事な同期だ。
普段、顔にださないやつだからこそ、ああいう大事なことは言葉を交わして解決しておかないとすれ違ってしまう気がした。
自分が芝浦を異性として好きかは……正直、まだわからない。
好きな気もする、という表現が一番合っている。それくらいふわふわした感じだ。
でも……ここですれ違って、万が一にも芝浦とこれから気まずくなったりふたりでご飯にいけなくなったりするのは、考えただけで嫌だった。
「あの、さ……」
食べ始めて三十分が経っても、芝浦からその話が出る様子はなかった。
だけど、私だってこのまま放っておくつもりはない。
嘘だとしても本音だとしても、そこはハッキリしておかないときっとお互いにもやもやを引きずってしまう。
そう思い、意を決して口を開く。