エリート同期は一途な独占欲を抑えきれない
「先週のね……」
けれど「あ、そういえば知ってるか? 横沢さんと……誰だっけ。〝給湯室シスターズ〟」と、話を遮られ……ややしてから答える。
眉間にシワが寄っていない自信はなかった。
「……渡辺さん?」
「そうそう。そのふたりが部長に呼び出されて注意を受けてたって、三階フロアでは噂になってる。我慢できなくなった誰かが報告したんだろうな」
心底呆れたような笑みで言う芝浦に、「あ……そうなんだ」と私も合わせて笑顔を作る。
……話の遮り方が強引に思えたけれど、気のせいだろうか。
もやもやしながらも、それを態度に出さないようにして相槌をうつ。
「そうだね。でも、いつまでも給湯室に居座られると本当に邪魔だからよかった。私は朝と夜だけだけど、もっと頻繁に使う部署だってあるだろうしきっと大変だったよね」
「女性社員は大変だっただろうな。結構、男と女の前では態度変えるって聞くし」
「そうだよ。私なんて挨拶したって無視されてたくらいだし。わざわざ部長から注意しなくても、芝浦が直接言えば言うこと聞きそうなのに」
「いや、荷が重い。あとあと面倒そうだろ」
苦笑いで言う芝浦に、まぁそれもそうかと納得する。
そんな注意をするために話しかけたら、それを皮切りにガンガン話しかけてきそうだ。
……って、そうじゃなくて。
出さなくちゃいけない話題があるでしょ、と自分自身を奮い立たせてもう一度決意を決める。
勢いよく顔を上げて芝浦を見た。
今度は遮られないようにと早口で一気に言う。
「この間の飲み会のことなんだけど」
緊張のあまり、少し怒ったような口調になってしまった。
そこを後悔しつつも黙って見ていると、芝浦は少しの間のあとで思い出したように「ああ」と答える。