独占溺愛~クールな社長に求愛されています~
「小牧、ちょっと来てくれ」

 蓮斗に手招きされて、詩穂は彼と一緒に入り口前のソファに向かった。促されるまま、金曜日に大泣きしたのと同じソファに座り、その隣に蓮斗が腰を下ろす。

「なんですか?」

 詩穂が訊くと、蓮斗は身を乗り出して小声で問う。

「石垣さんにマッチングアプリを教えてもらったのか?」
「それは社長には関係のないことですよね。おまけに業務にも関係ありません」

 詩穂はつっけんどんに答えた。

「あのな~」

 蓮斗はアームレストに右肘をついて、右手で額を押さえた。一度ため息をついて言う。

「マッチングで思いついたんだけどな、手工芸品を作りたい人と買いたい人をマッチングするようなアプリを開発しようかと思ってるんだ」
「えっ」

 詩穂は思わず身を乗り出して蓮斗を見た。

 詩穂が起業コンペの補助金を受けて作ったのは販売サイトだったが、売りたい人と買いたい人をつなぎたいという発想は同じだ。

「姉貴が息子を子ども園に入園させるとき、指定の形と大きさの体操着入れやランチマットを用意しなくちゃいけなかったんだ。市販されている体操着袋じゃ、園に指定された持ち手がついてなかったり、大きさが小さかったりで、苦労して探したけど見つからなくて、結局母親に頼んで作ってもらったんだ。で、あんまり出来がよかったもんだから、友達の子どもの分も頼まれて、母親が作ってた。そういうところに作ってほしいというニーズと、作りたいというニーズがあると思うんだ」
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