独占溺愛~クールな社長に求愛されています~
「いらっしゃいませ!」

 アルバイトと思しき若い男性店員が明るく声を張り上げた。もしかしたら詩穂の大学の後輩かもしれない。夢も希望もたっぷり持っています、と言わんばかりのはつらつとした様子がうらやましい。

「二名様ですかぁ? こちらへどうぞ!」

 ひたすら元気な声の店員に案内されて、詩穂と蓮斗は壁際の四人掛けの席に着いた。ひととおり注文して店員が去ってから、詩穂はボソッとつぶやく。

「若いっていいなぁ」

 蓮斗が苦笑した。

「なに言ってんだよ。俺ら、まだ二十八歳じゃないか」
「私、まだ誕生日が来てないから二十七歳だも~ん」
「変わらないだろ。二十七でそんなこと言ったら、ほかのサラリーマンやOLに怒られるぞ」

 蓮斗が店内を見回しながら言った。金曜日の夜らしく、カウンター席もテーブル席も九割近く埋まっていた。ビジネスマンふうの客が多いが、学生らしい若者の姿もちらほら見られる。

「……そうだね」

 詩穂は気のない返事をこぼした。ほどなくして詩穂の前にレモンサワーが、蓮斗の前に生ビールが運ばれてきた。

「とりあえず乾杯、かな?」

 蓮斗がジョッキを持ち上げ、詩穂もグラスを取り上げてカチンと合わせた。
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