独占溺愛~クールな社長に求愛されています~
第七章 今度こそ逃がさない
詩穂の原点とも言える点心の店は、市内の繁華街から外れた場所にある。川沿いの落ち着いた地域に位置し、大学生が行くには少し高く感じるが、起業コンペの直前、景気づけにと友人たちが予約してくれた店だ。優秀賞受賞後にもお祝いとして食べに来た思い出がある。
案内されたのは壁際のテーブル席だった。ふたりでメニューを眺め、小籠包やシュウマイなどの点心のほかに、“牛肉のみそ炒めのクレープ包み”や“カニとレタスの炒飯”など、ボリュームのある料理が食べられるコースを注文した。
詩穂はライチソーダを、蓮斗は紹興酒をオンザロックで飲みながら、順に運ばれてくる点心を頬張る。
「ん~、このおいしさ、久しぶり!」
小籠包から溢れる熱々の肉汁に、詩穂は悶絶しそうになった。悩み事はひとまず頭の隅に追いやって、おいしい料理を味わう。
「前はいつ来たんだ?」
紹興酒を一口飲んで蓮斗が言った。
「最後に来たのは起業コンペの直後だよ。起業を手伝ってくれた友達と三人で来たんだけど……」
あのとき未来はバラ色に見えた。けれど、詩穂の力が及ばず、起業は失敗に終わった。友達ふたりにも迷惑をかけてしまったのだ。
「そのふたりとはそれからも会ってるのか?」
「まさか。もう無理だよ。大学卒業後に就職活動させる羽目になっちゃったんだし……。顔向けできないよ。何年か前に『久しぶりに集まろう』って連絡をくれたんだけど……申し訳なくて結局行けなかった」
案内されたのは壁際のテーブル席だった。ふたりでメニューを眺め、小籠包やシュウマイなどの点心のほかに、“牛肉のみそ炒めのクレープ包み”や“カニとレタスの炒飯”など、ボリュームのある料理が食べられるコースを注文した。
詩穂はライチソーダを、蓮斗は紹興酒をオンザロックで飲みながら、順に運ばれてくる点心を頬張る。
「ん~、このおいしさ、久しぶり!」
小籠包から溢れる熱々の肉汁に、詩穂は悶絶しそうになった。悩み事はひとまず頭の隅に追いやって、おいしい料理を味わう。
「前はいつ来たんだ?」
紹興酒を一口飲んで蓮斗が言った。
「最後に来たのは起業コンペの直後だよ。起業を手伝ってくれた友達と三人で来たんだけど……」
あのとき未来はバラ色に見えた。けれど、詩穂の力が及ばず、起業は失敗に終わった。友達ふたりにも迷惑をかけてしまったのだ。
「そのふたりとはそれからも会ってるのか?」
「まさか。もう無理だよ。大学卒業後に就職活動させる羽目になっちゃったんだし……。顔向けできないよ。何年か前に『久しぶりに集まろう』って連絡をくれたんだけど……申し訳なくて結局行けなかった」