独占溺愛~クールな社長に求愛されています~
「あー、おいしかった!」
「うん、うまかったし、小牧と一緒に食べられて楽しかった」

 蓮斗も満足した様子なのは嬉しいが、今回も彼が奢ってくれた。

「ねえ、本当に割り勘にしなくていいの?」
「その話は行く前に決着をつけたぞ」
「でも……」

 蓮斗が足を止めたので、詩穂は一歩先で立ち止まった。振り返って彼を見る。

「俺は小牧が喜んでくれたら嬉しいなって思ったんだよ。その俺の気持ちを踏みにじるわけ?」

 じとっとした視線を送られ、詩穂は言葉に詰まる。

「で、でも……須藤くんには助けられてばかりだし……それに馬車馬のように働ける自信はないし」

 『俺のそばにいてくれたらそれでいい』と言われたが、詩穂が担っているのはアシスタントの仕事だ。きちんと給料がもらえるのに、五桁に近い点心の代金までチャラにできるほど、自分が優秀だとは思えない。

 蓮斗はため息をついた。

「だったら、冷たい物が食べたいから、コンビニでアイスを奢ってくれ」
「え? そんなんじゃ割に合わないよ」
「そんなことはない。点心を食べて小牧が幸せだと思う気持ちと、小牧が買ってくれたアイスを食べて幸せだと思う俺の気持ちは同じだ」
「えー……とても同じだと思えないけど」
「お・な・じ・だ」
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