独占溺愛~クールな社長に求愛されています~
 蓮斗が楽しそうにそのときの様子を話し始めた。蓮斗の話を聞いているうちに、詩穂のマンションが見えてくる。

「ここでいいよ」

 詩穂はエントランスの前で言ったが、蓮斗は首を振った。

「部屋の前まで送らせてくれ」
「心配性だなぁ。今日はそんなに酔ってないよ」
「いやいや。小牧が他人に迷惑をかけないか心配なんだ」
「はぁ? なにそれ」

 軽口を言い合いながらふたりでエレベーターに乗った。

 五階に到着し、詩穂は蓮斗の方を見ながら言う。

「ほら、誰にも迷惑かけずに無事に帰れたでしょ。とはいえ、送ってくれてありがとう」

 だが、廊下に足を踏み出した瞬間、数メートル先の五〇二号室の前に人影を見つけて、詩穂の足が止まった。

「弘哉さん……」
「詩穂!」

 弘哉が詩穂に駆け寄り、蓮斗が詩穂をかばうように一歩前に出た。

「詩穂、どうしてほかの男と婚約なんてしたんだ!」

 弘哉が声を張り上げた。

「どうしてって……先に婚約したのは弘哉さんじゃないですか」
「だから、腹いせにほかの男と婚約したのか? 結婚して落ち着いたら会いに行くって言ったのに!」
「おい、なにを言ってるんだ」

 蓮斗が険しい口調で言葉を挟んだ。弘哉は蓮斗を見たが、蓮斗の斜め後ろにいる詩穂に訴えるように言う。
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