独占溺愛~クールな社長に求愛されています~
「詩穂が……ほかの男のものになると知って……たまらなく苦しくなった。美月さんとの婚約を解消する。だから、俺のところに戻ってきてほしい」
「婚約を……解消?」
弘哉の言葉に驚き、詩穂はつぶやいた。蓮斗が振り返って詩穂を見る。
「小牧は……まだあいつのことが好きなのか?」
廊下の照明で逆光になっていて、蓮斗の表情はよく見えないが、なにかの感情を押し殺しているような低い声だった。
詩穂は弘哉を見た。今まで見たことがないような必死の表情で、目は血走っている。そんなふうに私のために必死になってくれているのだと思っても、不思議と心は動かなかった。
彼がほかの女性と結婚しなければならないと聞いたときは、なんて不条理な、と思った。お互い想い合っているのに引き裂かれるなんて、と苦しくなった。けれど、いったん彼と離れて、彼の本当の姿が見えたのだ。そして、詩穂自身、自分を偽っていたと知った。詩穂はもう弘哉の望む女性を演じることはできない。
詩穂は大きく息を吸い込んだ。
「弘哉さんは本当の私を知らないと思います」
「本当の詩穂?」
弘哉が詩穂に近づき、詩穂は蓮斗の左に並んだ。蓮斗の手が詩穂の右肘を掴み、詩穂は蓮斗の手にそっと左手を添える。
「婚約を……解消?」
弘哉の言葉に驚き、詩穂はつぶやいた。蓮斗が振り返って詩穂を見る。
「小牧は……まだあいつのことが好きなのか?」
廊下の照明で逆光になっていて、蓮斗の表情はよく見えないが、なにかの感情を押し殺しているような低い声だった。
詩穂は弘哉を見た。今まで見たことがないような必死の表情で、目は血走っている。そんなふうに私のために必死になってくれているのだと思っても、不思議と心は動かなかった。
彼がほかの女性と結婚しなければならないと聞いたときは、なんて不条理な、と思った。お互い想い合っているのに引き裂かれるなんて、と苦しくなった。けれど、いったん彼と離れて、彼の本当の姿が見えたのだ。そして、詩穂自身、自分を偽っていたと知った。詩穂はもう弘哉の望む女性を演じることはできない。
詩穂は大きく息を吸い込んだ。
「弘哉さんは本当の私を知らないと思います」
「本当の詩穂?」
弘哉が詩穂に近づき、詩穂は蓮斗の左に並んだ。蓮斗の手が詩穂の右肘を掴み、詩穂は蓮斗の手にそっと左手を添える。