独占溺愛~クールな社長に求愛されています~
「金曜日に会ったとき、弘哉さんは『詩穂みたいに控えめで、俺を立てて尽くしてくれる女性の方がいい』って言ってました。でも、本当の私はそうじゃないんです。居場所をくれたことが嬉しくて、弘哉さん好みの女性になりたいと努力しました。でも、結局なれませんでした。本当は控えめでも、おしとやかでもないし、男性を立てて尽くすタイプでもありません」

 詩穂は蓮斗の目を見て、話を合わせてと訴えながら、彼の左腕に両手を絡めた。

「それに、人前でベタベタするのだって平気なんです」

 蓮斗が詩穂の腰に右手を回して抱き寄せ、強い口調で弘哉に言う。

「おまえに詩穂は渡さない。絶対に」

 蓮斗が話を合わせてくれたことに感謝しながら、詩穂は弘哉を見た。

「だから……やっぱり私は弘哉さんのお父さんが言ったみたいに、あなたの地位にも家柄にも見合ってないんです」
「詩穂……」

 弘哉が肩を落としてうなだれ、詩穂は蓮斗の腕から自分の腕を解いた。

「CBエージェンシーの社長は弘哉さんです。社員を守ろうと決めたのも弘哉さんです。だから……どうかCBエージェンシーを立て直してください。私によくしてくれたほかの社員の人たちが困らないように……」
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