独占溺愛～クールな社長に求愛されています～

　詩穂の静かな声を聞いて、弘哉はゆっくりと顔を上げた。

「……俺は決断を間違えたんだろうか」
「わかりません。でも、もし会社が倒産するようなことになったら、それは間違った決断だったのだと思います。だから、間違った決断にならないようにしてください。お願いします」

　弘哉は肩を落としてかすかに微笑んだ。

「そうか……詩穂はこんなふうにはっきり意見を言うタイプだったんだね。ずっと俺に合わせてくれていたんだな……。すまなかった」
「私の方こそ……ごめんなさい。ずっと人生の負け組だと思っていたから、弘哉さんが居場所をくれて嬉しかったんです。そのことに甘えて……自分を繕っていた私もいけませんでした」
「……詩穂、どうかお幸せに」
「弘哉さんも」

　弘哉は一度頷き、力なく歩き出した。その背中が寂しげに見えて、詩穂の胸が痛む。

　弘哉の姿がエレベーターに吸い込まれ、機械的な音声が「ドアが閉まります」と告げた。もうこれで彼と会うこともなくなるだろう。

「大丈夫……かな？」

　詩穂はぼそっとつぶやいた。

「自分の言葉に責任を持てないようじゃ、社長を務める資格はない」

　蓮斗の口調は厳しく、彼が背負っている責任の重さがにじんでいた。詩穂が蓮斗を見たら、彼も詩穂を見た。その瞳が熱を宿したようにかすかにきらめいて見える。