独占溺愛~クールな社長に求愛されています~
 そう言いながらも、それは嘘だとわかっていた。詩穂自身、わざとそうしていたのだから。

「俺のこと、嫌いなのか?」

 どこまで本気かわからない問いかけに対し、詩穂は冗談っぽく笑って返す。

「あれ~、バレてたぁ?」
「俺は真面目に訊いてるんだけど」

 蓮斗が真顔になり、詩穂は唇を引き結んだ。だけど、本当の理由は言いたくなくて、詩穂は笑顔を作って答える。

「まさか、須藤くん、私があなたのことを好きだとでも思ってたの? それは自意識過剰もいいとこだよ~。いくらモテてたからって」
「好かれてるとは思ってなかったけど、嫌われてるとも思ってなかった」
「じゃあ、好きでも嫌いでもない、普通ってことで」

 詩穂は「あはは」と笑いながら、サラダを口に入れた。けれど、動揺しているせいか、味がわからない。

「……本当は俺がうらやましかった。違うか?」

 低い声が胸にずしんと響いた。心を見透かされ、詩穂の顔から笑みが消える。蓮斗の顔を見ることができず、レモンサワーを一気に空にした。

「すみませ~ん、レモンサワーのおかわりください」

 詩穂は店員に声をかけた。そうやって時間稼ぎをしていることすらお見通しらしく、詩穂が視線を前に戻したとき、蓮斗はさっきと同じ片手で頬杖をついたまま、詩穂を見ていた。
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