独占溺愛~クールな社長に求愛されています~
 蓮斗が大きく息を吐いた。

「こんなの……ただの拷問でしかないんだけど」
「え?」
「好きな女に裸で抱きつかれてなにもできないなんて、地獄だ」

 詩穂の手を握ったまま、蓮斗はくるりと詩穂の方を向いた。そうして大きく微笑む。

「詩穂、大好きだ」

 嬉しいのと安堵したのとで、詩穂の目から涙がこぼれた。

「私も大好き」

 蓮斗が詩穂の両手を壁に押しつけて、彼女の目尻にチュッと口づけた。そうして壁に頭を押し当てる。

「あー、ダメだ」

 蓮斗がため息交じりにつぶやいた。

「どうしたの?」

 詩穂はすぐ横にある蓮斗の顔を見た。彼は悩ましげな表情で詩穂をチラリと見る。

「俺、もう自分を止められない」

 蓮斗は低い声で言ったかと思うと、詩穂の唇をキスで塞いだ。襲いかかるような激しいキスに詩穂の心臓が大きく跳ねる。

「れ、蓮斗」

 名前を呼んだ唇を割って彼の舌が侵入し、口内を蹂躙する。想いをぶつけるような激しい口づけ。重ねられた熱い肌。なにより彼が同じ想いだったことが嬉しくて、詩穂は身も心も彼に奪われていくのだった――。



 結局、シャワーを浴び終えたあとには、出勤するギリギリの時間になっていた。
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