独占溺愛~クールな社長に求愛されています~
「俺はいったん帰宅して、車で出社するよ」
「朝食は?」
「車の中で食う」

 蓮斗がシャツのボタンを留めながらニッと笑って、バスタオルを体に巻きつけた詩穂に軽くキスをした。

「あー、もう、今日はなんで火曜日なんだろうなぁ」
「仕方ないでしょ。昨日は月曜日だったんだから」
「当たり前のことを言うなよ」

 蓮斗が苦笑した。

「それじゃ、また会社で」

 今度は肩にキスを落として、蓮斗は部屋を出て行った。詩穂は大急ぎで服を着る。今日は白のブラウスに黒のパンツ、それにペールブルーのカーディガンを合わせた。そうして必要最低限のメイクをしてコートを羽織り、家を出る。

(蓮斗のせいで朝ご飯、食べ損ねた!)

 心の中で文句を言いながらも、顔はにやけていた。もうすぐ十一月になるという肌寒い気温だが、心の中はポカポカしている。

 電車に乗って会社の最寄り駅の北浜駅で降り、歩道を急ぐ。腕時計を見ると、就業時間まであと十五分あった。早足で行けば、会社でなにか食べられるかもしれない。ガラス戸棚にあったカップラーメンは誰かの私物だろうか。わけてもらえないかと考えながら歩いていると、後ろから軽くクラクションを鳴らされた。振り返ったら、ハザードランプを点滅させながら、一台の黒いSUVがすぐ横で路肩に停車した。助手席の窓が下がり、運転席の蓮斗の顔が見える。
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