独占溺愛~クールな社長に求愛されています~
 通話を終えて、詩穂はキッチンに向かった。女性用の小さな弁当箱しかないため、見た目はよくないが保存用のプラスチックの容器にご飯とおかずを詰めた。それをトートバッグに入れて、コートを羽織り、会社に向かう。

 会社の近くで西野のためにお茶とおにぎりを買って、三時間ほど前に退社したばかりのオフィスに戻った。自動ドアから中に入ると、廊下はしんとしていて、奥の大部屋から明かりが漏れている。

 半透明のガラス扉から覗くと、蓮斗のブースとそこからいくつか離れた西野のブースに人影があった。

 詩穂はガラス扉を軽くノックした。

「はい」

 西野が振り返って立ち上がり、詩穂を見て不思議そうな顔になる。

「小牧さん、忘れ物ですか?」
「あ、えっと、西野さんが残ってるって社長から聞いて……差し入れを持ってきました」

 詩穂はオフィスに入って、コンビニの袋を西野に手渡した。

「うわー、ありがとうございます! わざわざすみません。事務担当さんってこんなことまでしてくれるんですね~」

 西野が感激したように言い、詩穂は目を泳がせた。どうやら西野は詩穂と蓮斗の関係を知らないようだ。
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