独占溺愛~クールな社長に求愛されています~
 そう言って小さく会釈をし、西野はブースの中に戻った。

 仕事中なのだから、蓮斗に「小牧」と呼ばれても気にならない。むしろ彼にもらった言葉に、また自分の心が救われた。彼の起業が成功して、彼の会社が成長を続けている。彼のそばにいればいるほど、その理由が見えてくる。



 その日は六時半に仕事を終えて、ひとりでオフィスを出た。エレベーターを待ちながら、バッグからスマホを取り出す。蓮斗に会えるかどうか訊こうとメッセージを打とうとしたとき、エレベーターの扉が開いた。乗り込んで閉ボタンを押し、扉が閉まりかけた瞬間、誰かが走ってくる足音がした。

 乗りたいのだろうと思って、詩穂は開ボタンを押す。再び開いた扉の向こうに蓮斗の姿があり、詩穂は目を丸くした。

「蓮……社長」
「ちょっと」

 蓮斗に手招きされ、詩穂は乗っていたほかの人に「すみません、降ります」と声をかけて、エレベーターを降りた。詩穂の背後で扉が閉まる。

「なにかありましたか?」

 トラブルでもあったのだろうかと心配して蓮斗を見ると、彼はなにか迷っている様子で遠くを見ながら、右手で後頭部を軽く撫でた。

「社長?」

 詩穂が呼びかけ、蓮斗は彼女の方を見た。そうして一度唇を湿らせて、口を開く。
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