独占溺愛~クールな社長に求愛されています~
「ごめん」
「え? なにがです?」
「昼間……きついことを言った。西野に心配されるような言い方をして悪かった」

 詩穂は目を見開いた。

「とんでもない! あの言葉に……過去を引きずっていた心が救われました。いつまでも過去の失敗にとらわれてちゃいけないんだって目が覚めて……感謝してるんです」
「ホントに?」
「もちろん!」

 詩穂の返事を聞いて、蓮斗が安堵したように肩の力を抜いた。そうしてぶつぶつと言う。

「うん、そうだよな。詩穂が公私混同して怒ったりするはずはないと思ってたんだ。ったく、西野のやつが詩穂に声をかけるから……余計な心配をしてしまった」

 西野が詩穂のことを心配してくれたのが、気になっていたらしい。それを知って、詩穂の顔から自然と笑みがこぼれた。

「ほかにご用はありますか?」

 詩穂の問いかけに、蓮斗が「ああ、そうだ」とポケットに手を入れて、車のキーを取り出した。

「これ、車の鍵。あと少しで帰れそうだから、中で待っててくれないか? 今日は俺の部屋で一緒に過ごそう」

 最後は声を潜めて蓮斗が言った。蓮斗と一緒にいられるとわかって、詩穂は嬉しくなりながら受け取る。

「わかりました。待ってます」
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