独占溺愛~クールな社長に求愛されています~
 詩穂は焼き鳥の串を握ったままつぶやいた。

「友達も多くて、モテて、先生からの信頼も厚くて、論文も大学のオンラインジャーナルに掲載されて……。おまけに起業コンペでは同じ優秀賞だったのに、末路はまったく逆だし。あ、違う。須藤くんの会社は好調だから、末路なんて言い方はおかしいか」

 詩穂は目に涙がじわじわと浮かび、それをごまかすようにぺろっと舌を出した。

「そんなふうに醜い心だったからなのかな~……。大学を卒業して就職したら、最初の会社は就職後一年で潰れたし、次に就職した会社は……辞めざるをえなくなって辞めたし」
「辞めざるをえなくなったって?」

 蓮斗が怪訝そうな顔になった。

「私……会社の部長と付き合ってたんだ。弘哉(ひろや)さんって言う、六歳年上のステキな人。総務部の上司で……あるとき仕事をねぎらって食事に連れていってくれたの。始まりはお酒を飲んでそのまま……って感じだったんだけど、私のことは大切にしてくれてた」

 そう信じてた、とつぶやいて、詩穂は続ける。

「実は弘哉さんは会長の息子で……付き合ってることはみんなには内緒だったの。でも、付き合ってもうすぐ三年ってときに……弘哉さんが社長就任と同時に取引先銀行の頭取のお嬢さんと婚約して……」
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