独占溺愛~クールな社長に求愛されています~
 今日も録音した議事録の文字起こしを頼みに来た啓一に、ニヤニヤされた。

「いやー、ホントよかった。大学時代の蓮斗を知っているだけに、感無量だよ」

 通りかかった営業担当の男性が足を止めた。

「どうかしたんですか?」

 男性に訊かれ、啓一が「なぁ?」と詩穂に話を振る。詩穂は赤くなるまいと必死に耐えながら、なんの話かわかりません、というふうにパソコンのキーボードを叩き続ける。

「ま、キミにもそのうちわかるよ」

 啓一は余計な一言を言って営業社員の肩を叩き、詩穂のデスクの上にボイスレコーダーを置いた。

「それじゃ、よろしく」
「はい」

 アットホームな会社だけに、詩穂と蓮斗の関係が全社員に知られるのも時間の問題だろう。弘哉のときにはなかったことだ。

 もし別れたりしたらどうするんだろう。

 そんなことをふと考えてしまい、詩穂は首を左右に振った。

 縁起でもないことは考えない方がいい。

 再び手を動かし始めたとき、パソコンのタスクバーに社内メールの受信を知らせるマークが点滅した。クリックして開くと、蓮斗からのメッセージだ。

【至急、第二会議室に来てほしい】
< 160 / 217 >

この作品をシェア

pagetop