独占溺愛~クールな社長に求愛されています~
 そのとき、真梨子から届いたメッセージの内容を思い出した。真梨子は蓮斗を見かけたと思い、詩穂に蓮斗が家にいるかどうか確認してきたのだ。

 わざわざそんなことをするなんて、蓮斗が別の女性と一緒にいるのを目撃したからではないのか……?

 考え出すと疑心暗鬼になり、胸にドロドロとした感情が浮かんだ。それが嫉妬なのだとわかって、詩穂は胸を押さえてコートの生地をギュッと握る。

 ふと見ると、蓮斗が手を挙げてタクシーを停め、女性を先に乗せるのが見えた。

「蓮斗!」

 詩穂は思わず声を上げたが、彼は気づくことなく、タクシーに乗った。バタンと音がしてドアが閉まり、タクシーが走り出す。

 蓮斗がほかの女性とどこかへ行ってしまった……。

 詩穂は唇を噛みしめ、ふらふらと駅に戻り始めた。

 ほんの数十分前に抱いていたワクワクした気持ちは消えて、詩穂は重い足取りで改札を通る。やってきた電車に乗って、目的の駅で降りたものの、ショッピングを楽しむ気にはなれない。

 大きなカフェに入ってレジでレモンティーを買い、窓に面したカウンター席の隅に着いた。砂糖を入れてかき混ぜ、紅茶を一口飲む。

「はぁ……」

 重いため息をついてカウンターに両腕を置き、顎を乗せた。
< 174 / 217 >

この作品をシェア

pagetop