独占溺愛~クールな社長に求愛されています~
 エレベーターはぐんぐん上昇して、ほかの階で停まることなく二十階に着いた。下を向いたまま先に降りて、廊下を進む。後ろからコツコツとハイヒールの音がして、女性も同じ方向に向かっているのだとわかった。けれど、女性の足音はずっと後をついてくる。詩穂は嫌な予感を覚えて、一つ手前の二〇〇二号室の前で足を止めた。女性は詩穂を追い抜いて、二〇〇一号室の前で立ち止まった。そうしてインターホンを鳴らす。

 どういうことなのか。

 詩穂はゆっくりと視線を女性に向けた。ベージュのコートを着たスリムな女性で、艶やかな黒髪のロングヘアをしている。肌は白くて美しく、目は透き通ったブルー。黒髪だったため外国人だとは思わなかったが、服装や髪型が蓮斗と一緒にいた女性とまったく同じだ。大人っぽく見えるため、年齢はよくわからないが、二十代であることだけは間違いなさそうだ。

 目が合って、女性が流暢な日本語で言う。

「こんにちは」

 とっさのことに詩穂が返事をできずにいると、女性は不審そうに眉を寄せた。だが、すぐに蓮斗の部屋のドアに向き直って、もう一度インターホンを押した。

 蓮斗が出てきて、彼女を笑顔で迎え入れたらどうすればいいのか。

 そんな姿、見たくない!
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