独占溺愛~クールな社長に求愛されています~
 だからなんなのか。

 詩穂は腹立たしいのをこらえて答える。

「お見かけしました」
「あら、じゃあ、私のことはご存知ですよね?」
「すみません、存じ上げません」
「ジェニファー・マクブライトと言います」

 彼女が名乗ったので、仕方なく詩穂も名乗る。

「私は……小牧詩穂です」
「小牧さんは蓮斗さんとはどういう関係なんですか?」
「どういうって……一緒に住んでます」
「それはさっき聞きました。そうではなくて……ビジネス上の関係です」

 いったいなにを訊かれているのかわからず、詩穂は眉を寄せながら答える。

「彼の会社で働いています」
「ア・ミア・エンプロイー?」

 いきなり英語で訊かれて、詩穂は瞬きをした。

 A mere employee。ただの社員。つまり、平社員かと訊かれているのだろう。

「そうですけど」
「まだ働いて短いですよね?」
「一ヵ月と……ちょっとです」

 ジェニファーの口元に笑みが浮かんだ。

「じゃあ、あなたにできるのは彼の足を引っ張ることだけですね」
「はい?」
「私、こういうものです」

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