独占溺愛~クールな社長に求愛されています~
「子ども扱いしないで」
「してないよ」

 蓮斗が左手をテーブルに置き、わずかに首を傾げて詩穂を見た。その表情が今まで見たことがないくらい温かくて、胸がじぃんとしてくる。つらくて惨めで罪悪感にまみれた失恋、誰にも話せなかった行き場のない想い。それを吐き出せたことで、ほんの少し心が軽くなった気がする。

「それより、須藤くんこそどうなのよ。飲みたい気分だって言ってたじゃない」
「ああ……」

 蓮斗は右手で前髪をくしゃりと握った。そうして迷うように視線を落とす。

 彼ももっと飲めば愚痴を吐き出せるだろうか? 蓮斗のジョッキはすでに空になっている。

「生ビールのおかわり頼む? それとも、高級ワインをボトルで頼む?」

 詩穂の言葉に、蓮斗はクスッと笑った。

「居酒屋に高級ワインはないだろう」
「それもそうか。じゃ、生ビールにするよ」

 詩穂は店員に合図をして、蓮斗にはビールのおかわりを、自分にはグレープフルーツサワーを注文した。やがてドリンクが運ばれてきて、詩穂は自分のグラスを蓮斗のジョッキに軽く当てた。

「で?」
「『で』って?」

 蓮斗が苦笑した。
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