独占溺愛~クールな社長に求愛されています~
 ドアを閉めてチェアに座り、再びスマホを見る。その瞬間、詩穂は「あっ」と声を上げた。

 さっき見ていたミニポーチの上に“SOLD OUT”の文字が表示されていたのだ!

(迷っている間に誰かに買われた~!)

 詩穂は思わず頭を抱えたが、でも大丈夫なのだ。

 利用者からのフィードバックを受けて、数回前のアップデートで、ショップにリクエストを送信できる機能が追加されている。

 詩穂は、さっきのミニポーチをもう一度出品する際にはお知らせしてほしい、とリクエストを送り、画面を閉じた。

 大学時代に興した会社は十ヵ月で幕を閉じた。ハンドメイド・コネクションがリリースされてから一ヵ月と少ししか経っていないが、もっとずっと長く続けていけそうな気がする。それは、蓮斗の、ソムニウムのバックアップがあるからだ。ひとりじゃない、という気持ちが、毎日に勇気をくれる。

 それもこれも、蓮斗がそばにいてくれるからこそ。

 耳を澄ましたら、焼き上がりを知らせるオーブンの電子音が聞こえてきた。順調にケーキ作りを進めているようだ。

 詩穂はデスクに頬杖をつきながら微笑んだ。


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