独占溺愛~クールな社長に求愛されています~
「あっ」
「気づいてなかったのかよ」

 蓮斗はかすかに微笑んだ。詩穂は照れ笑いを浮かべて手を引っ込めようとしたが、その手を蓮斗が握った。

「須藤くん?」
「ありがとうな」

 やけに真面目な表情で言われて、詩穂はドギマギする。

「なにが? あ、撫で撫でしたこと? もっとしてあげようか?」

 そう言ってごまかした。蓮斗が小さく苦笑する。

「子ども扱いは、もういいかな」
「そっちが先に……っ」

 したんでしょ、と言おうとしたが、言葉が出てこなかった。蓮斗が詩穂の手を握ったまま、自分の頬に押し当てたのだ。詩穂の手のひらに、張りのある蓮斗の肌が触れている。

「な、なに」

 手を引こうと力を入れると、蓮斗が詩穂の手を離した。

「ときどき小牧って、こうやって優しいんだよなぁ」
「ときどきって……失礼ね。私はいつだって優しいよ」
「自分で言うか?」
「優しくなかったら、須藤くんとこうして飲んでないって」
「おまえな~」

 蓮斗は小さく息を吐いてから、そっと笑みを浮かべた。

「小牧って、なんだかんだ言って、結構、面倒見がいいんだよなぁ。大学時代だって、起業コンペで行き詰まっていた友達を、励まして力になってやってたし。『自分のライバルなのに助けてどうすんだよ』って言ってるやつもいたのにな」
「友達だったからね」
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