独占溺愛~クールな社長に求愛されています~
 蓮斗に疑わしげな視線を向けられ、詩穂は枕を取って投げつけた。彼は軽々とキャッチする。

「失礼ね! だったら、食べなくていいです~」

 詩穂は頬を膨らませてベッドから降りた。

「私ひとりで食べるから。須藤くんはさっさと帰ったら」

 ソファの前を素通りしようとしたとき、左手首を蓮斗に掴まれた。

「冗談だって。ごめん」

 蓮斗を見ると、彼は右手を顔の前に持ち上げて、ごめんのポーズをしている。

「今さら謝ったって許してあげない」

 詩穂がそっぽを向いた直後、ぐいっと手を引かれた。バランスを崩した詩穂を、蓮斗が膝の上に横向きに座らせる。

「ちょっと」

 驚いて左側を見たら、目の前に蓮斗の顔があってびっくりした。

「ふざけないで」
「悪かったって言ってるだろ」

 蓮斗は詩穂の手首を放し、鎖骨の辺りで詩穂の髪をすくい上げて、毛先に指先を絡めた。

「いいにおいがする」

 蓮斗が髪を絡めたまま指先を口元に近づけた。上目遣いで視線を投げられ、詩穂の心臓が大きく跳ねる。

「シャ、シャワー浴びたからっ」
「俺も一緒に浴びたかったな」

 拗ねたような表情に、寝顔とは打って変わった色気を感じる。

「はぁ? タチの悪い冗談はやめてよね! ひとりでどうぞ!」
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