独占溺愛~クールな社長に求愛されています~
 立ち上がろうとした詩穂の腰に、蓮斗が両手を回した。

 がっしりとした胸板が肩に触れて、落ち着かない。

「ち、近い近い! 須藤くん、近いってば!」
「なんでそんなに慌ててるの?」
「慌ててないって」

 蓮斗の顔にいたずらっぽい笑みが浮かぶ。

「じゃ、動揺してる?」
「べ、別にしてませんっ」
「俺を男だって意識してるんだろ」

 図星を指されてドキッとし、それを悟られまいと詩穂は蓮斗の胸を両手で押しやる。

「してないっ! いいかげんに離れないと、本当にブランチ食べさせてあげないからねっ」

 詩穂は、顔が赤いのは蓮斗を意識しているからではなく、怒っているからなのだというように、彼を睨んだ。

「んー、それは嫌だな」

 蓮斗が手を放し、詩穂はさっと立ち上がって彼から離れた。まったくなんて心臓に悪いことをするのだ。

「スープとピザトースト、温め直しておくから、早くシャワーを浴びてきてよね」

 詩穂はローチェストを開けてフェイスタオルと予備のバスタオルを取り出し、蓮斗に放り投げた。

「了解」

 蓮斗はタオルを難なく受け止め、詩穂をチラッと見てからベッドルームを出る。
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