独占溺愛~クールな社長に求愛されています~
「うん。最初の会社に就職したときに、紅茶に詳しい先輩がいて。いろいろ教えてもらったら、はまっちゃったんだ」
「そうなのか。俺が朝、勝手に飲んだのとはまた違う香りだよな。これはなんて茶葉?」
「イングリッシュ・ブレックファスト・ティー。いろんなティーブランドがそれぞれ独自のブレンドで出してるんだけど、目覚めの一杯としては私はここのブランドのが一番好き」

 詩穂はシックなグリーンの缶を手に取った。わざわざ神戸(こうべ)に行って紅茶専門店で買ったものだ。

「同じネーミングなのに違いがあるんだな」

 蓮斗が感心したように言った。

「さ、ブランチと言うよりもうランチの時間だけど、食べよ」
「ああ、ありがとう」

 ふたりで「いただきます」と声を合わせ、詩穂はティーカップを取り上げた。セイロンとアッサムを中心にしたブレンドは、深めのしっかりした味わいで、気持ちが引き締まる。

 蓮斗が紅茶を一口飲んで言う。

「なるほど、寝起きに飲むのにぴったりだな」
「でしょ」

 蓮斗の言葉が嬉しくて詩穂は思わず胸を張った。弘哉はコーヒー派で『紅茶では目が覚めない』と言うので、彼のためにドリップコーヒーを買ったものだった。
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