独占溺愛~クールな社長に求愛されています~
 詩穂はフローリングの上でピシッと正座をした。

「ぜひ採用試験を受けさせてくださいっ」

 そうして勢いよく頭を下げた瞬間、ローテーブルの角にガツンと頭をぶつけた。

「いーっ」

 思わず額を押さえて背中を丸める。額はズキズキ痛むが、なにより恥ずかしくてたまらない。痛さと恥ずかしさで涙がにじんできて、詩穂はギュッと目をつぶった。

「冷やした方がいいだろうな」

 蓮斗が立ち上がり、廊下を遠ざかる足音がした。洗面所の方でなにやら物音を立てていたが、しばらくして戻ってきてそっと詩穂の右手を掴む。

「見せてみろ」

 片膝をついた蓮斗が、詩穂の顎に手を添え、すくい上げるようにして上を向かせた。

「あーあ、少し赤くなってるな」
「痕が残ったらどうしよう」

 詩穂は涙目のまま蓮斗を見た。彼は手にしていた濡れタオルを詩穂の額に当てた。冷たくて気持ちがいい。

「そんなにひどくはない。痕は残らないだろ」

 蓮斗が言いながらローテーブルの向かい側に戻って座った。

「ああ、もう最悪」

 詩穂は深いため息をついた。左手でタオルを押さえながら、右手でピザトーストをかじる。黙々と食べているうちに痛みが薄れたように感じて、タオルを外した。
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