独占溺愛~クールな社長に求愛されています~
「どう? まだ赤い?」

 詩穂は情けない気持ちで蓮斗を見た。蓮斗は小さく微笑み、詩穂の隣に移動する。

「少し赤いな。早く治るおまじないしてやろうか?」
「痛いの痛いの飛んでいけーってやつ?」

 子どもじゃあるまいし、と言いかけたとき、蓮斗が両手を伸ばして詩穂の頬を包み込んだ。そうして顔を近づけたかと思うと、そっと額に唇を触れさせた。

「す、須藤くんっ!?」

 詩穂の顔にカーッと血が上った。蓮斗は詩穂の頬から手を離したものの、頬骨の辺りが朱を帯びている。

「いや、姉貴が子どもにしてるのを見て……効くのかなって思って」
「そ、そういうのは愛情がある者同士じゃないと効かないと思う……」

 詩穂は視線をテーブルに落としながら、口の中でもごもごと言った。

「悪かったな。あんまり頼りなげな表情をしてたから、つい……」

 蓮斗を見ると、彼は右肘をついて顎を支えながら、あらぬ方向を見ている。頬がさっきよりも赤くなっていて、彼自身、失敗したと思っているのが伝わってきた。

「だ、大丈夫! びっくりさせられたおかげで、痛みは和らいだから。っていうか、もうぜんぜん痛くない。うん、平気、ありがとう」
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