独占溺愛~クールな社長に求愛されています~
「石垣さんに席を教えてもらったら、俺の席においで。みんなに紹介する」
「わかりました」

 詩穂の返事を聞いて、蓮斗は一度頷き、コーヒーサーバーでエスプレッソを淹れてパーティションを出ていった。フロアを歩いていく彼に、出社してきた男性社員が声をかけた。仕事の話でもしているのか、話に応じる彼の横顔は真剣だ。その様子は大学時代の彼とも金曜の夜の彼とも違って見えて、なんだか遠い存在に感じる。ライバルから友達になって、距離が縮まったはずなのに。

 会社では当然「社長」と呼ばなければいけないし、彼が雇い主である以上、タメ口を利いていいはずがない。

 そう思うと、彼との間に距離を感じて少し寂しさを覚えた。



 真梨子が案内してくれた詩穂のデスクは、フロアの右側のシマにあった。八つのデスクが二つずつ向き合うように置かれていて、詩穂の向かい側は真梨子の席だ。

「三人が総務担当で、分担して経理や人事の仕事をしてるの。残りの四人は営業さん。詩穂ちゃんは事務アシスタントだから、基本的には開発担当さんたちのサポートが仕事ね。それじゃ、社長のところに行こう」
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