独占溺愛~クールな社長に求愛されています~
 詩穂は気持ちを切り替えようと、スパークリングワインをぐいっと飲んだ。

 詩穂の前の席から、啓一が笑いながら話しかける。

「小牧さんってお酒強そうに見えるよね」

 大学の同級生に話しかけられ、詩穂は肩の力を抜いて答える。

「よく言われます~。でも、須藤社長には負けますけど」
「ああ、先週、偶然再会して一緒に飲みに行ったって蓮斗が言ってたな」

 啓一がエビとブロッコリーのサラダをフォークにのせながら言った。

「そうなんです。私よりたくさん飲んでたはずなのに、ほろ酔いって感じでした」
「あいつは付き合いで飲むようになってから、強くなったんだ」
「付き合いで?」
「ああ。会社を設立してすぐとか、世話になった教授に誘われたり、人脈作りでいろんなパーティに出席したりして」
「そうなんですね」

 詩穂がチラッと見ると、蓮斗は三十代後半くらいの男性社員と楽しげに話しながら、グラスを傾けている。彼のグラスに入っているのは赤ワインだ。

「詩穂ちゃんもワイン飲む?」

 真梨子に勧められて、詩穂は「お願いします」と答えた。だが、真梨子ではなく啓一が詩穂と真梨子のグラスにワインを注いでくれる。

「小牧、飲み過ぎるなよ」

 蓮斗の声が飛んできて、詩穂は彼の方を見た。目が合った蓮斗がニヤッと笑う。彼の前でやらかしたことを思い出して、詩穂の頬が赤くなった。
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