独占溺愛~クールな社長に求愛されています~
第五章 一線は越えられない
 土曜日の朝、詩穂はベッドの中でまどろんでいた。カーテンの向こうは明るく、ローチェストの上の時計は十時半を指している。

 昨日はふたりだけのオフィスで紅茶を飲んでから、蓮斗がタクシーで家まで送ってくれた。そして部屋の前まできちんと送り届けてから、帰っていったのだ。蓮斗が助けてくれたこと、気遣ってくれたことが嬉しくて、今思い出しても頬が緩んでしまう。

「さーて、そろそろ起きようかな」

 ひとりでつぶやき、ベッドから降りた。昨日泣いたからか、目が腫れて顔も少しむくんでいる。

 外出する予定はないので、まあいいだろう。

 ソファにだらしなく座って、牛乳を注いだシリアルを食べていると、スマホが軽快な電子音を鳴らしてメッセージの受信を知らせた。

(誰だろ)

 ソファの前から手を伸ばして、ローチェストの上で充電していたスマホを取った。メッセージの送信者は“須藤蓮斗”と表示されている。

【おはよう。まだ寝てる?】

 普通はもう起きているか訊くものだろう。詩穂は苦笑して、文字を打ち込む。

【おはよう。とっくの昔に起きてる】

 スマホを置いてスプーンを手に取ったとき、今度は電話が鳴った。蓮斗からだ。

『まだ寝てるかと思ってた』
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