独占溺愛~クールな社長に求愛されています~
(こんなの……付き合ってるみたいじゃないの)

 けれど、蓮斗はスキンシップが過剰なのだ。それになにより、蓮斗は詩穂が落ち込んでないか気を遣って連れ出してくれただけ。

 詩穂は大きく息を吸い込んで吐き出したが、なぜだか心が落ち着かない。

「あ、そ、そうだ、お腹空かない?」

 隣で蓮斗が苦笑する。

「色気より食い気ってやつか」
「花より団子だよ!」
「同じ意味だろ」

 詩穂はさりげなく反転して蓮斗から離れ、彼と向き合ってなんでもない会話を続ける。

「で、須藤くんはなにが食べたい?」
「しょうがないなぁ。降りながら考えるよ」

 その一言で展望台から降りることが決まり、雰囲気が盛り上がり始めたカップルたちを尻目に、詩穂たちは一階に下りた。

 駅の方向に向かいながら、詩穂は蓮斗に訊く。

「パンケーキは私のリクエストを聞いてもらったから、晩ご飯は須藤くんが希望を言って」
「そうだな~。どうせなら楽しく食べられるのがいいよな」

 蓮斗が前方に見えるビルに目をやった。レストランやショップの看板が見え、その中に“自分で揚げる串揚げ”を謳い文句にしている店を見つけた。北新地(きたしんち)にある高級串揚げ店の系列店で、質の高い素材をリーズナブルに食べられると雑誌などで話題になっている。
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