独占溺愛~クールな社長に求愛されています~
 詩穂は蓮斗を見た。

「串揚げはどう!?」

 ふたりで同時に同じことを言い、それがおかしくて互いの顔に笑みが浮かぶ。

「楽しそうだよね?」
「だな!」

 意見が一致して、たったそれだけのことなのに嬉しくなった。

 遠慮しなくていい。気を遣わなくていい。これは気の合う友達以外のなにものでもないはずだ。

 蓮斗と一緒に飲食店がたくさん入ったビルの三階に上がり、目当ての店に着いた。並ばずに案内された店内は広く、男性ばかりのグループ、カップル、親子連れなどで賑わっていた。料理はビュッフェ形式で、好きな具材とタレを自分で選ぶらしい。

 串揚げにはもちろんビールというわけで、詩穂と蓮斗はそれぞれ生ビールを注文し、食べたい具材を選んできた。

「さあ、食べるぞ~」

 初めての自分で揚げる串揚げにワクワクして詩穂が言い、蓮斗が苦笑する。

「その前に“揚げるぞ~”だろ」
「だよね」

 詩穂は小さく舌を出した。テーブルの真ん中に、はめ込み式になった長方形の揚げ鍋があり、好みの具材を水溶き衣にくぐらせパン粉をつけて揚げるのだ。

「まずは豚肉」

 時間がかかりそうな肉を先に揚げ始め、続いてレンコンやタマネギ、ベビーコーンなどに衣をつけて鍋に投入する。やがてこんがりキツネ色になって浮き上がってきたらできあがりだ。
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