揺蕩う空へ魔法の句を
私はフラフラと江戸の町を歩く。すると、刀を手に持った人が私に刀を向けて笑い、私を誰もいない道に連れ込んだ。
「お前、金をよこせ」
私はその男性の言葉に首を横に振る。すると、男性は刀を私に突きつけながら「よこさないと…どうなるか分かるよな?」と笑った。
私は恐怖で全く動けない。逃げたくても逃げられず、足も動かない。
「…お前、何をやっているんだ?」
不意に聞きなれた声が聞こえ、男性は後ろを振り返る。そこには、さっきまで無かった刀を手に持った義昭が立っていた。
「…くそっ!」
義昭を押し退けるように男性は逃げていく。義昭は私に近づいてくると、無表情で私を見つめた。
「……天、もう良い」
義昭は刀に話しかける。すると、刀は煙に包まれて天くんが姿を現した。
「…ふふっ。僕が刀に化けていたんですよ。義昭様に頼まれて」
天くんはそう言って満面の笑みを浮かべる。
「義昭…もしかして私を助けてくれたの?」
私が微笑むと、義昭は少し顔を赤くして「べ、別にお前を助けたくて助けたわけじゃねぇよ!」と顔を逸らした。
「…とりあえず、帰るぞ。色葉」
義昭は私に背中を向けて歩き始める。義昭は初めて私の名前を呼んでくれた。