揺蕩う空へ魔法の句を
私は義昭の講座が終わり、義昭の後ろを付いて校内を歩く。すると、後ろから不意に抱きつかれた。
「ねぇ、君!あんな男よりも俺と一緒に帰ろうよ」
恐る恐る後ろを見ると、髪を金色に染めた男子が私を見て笑っていた。耳にはピアスを、手には指輪を付けている。
「……い、嫌です。はな、してください」
私は震えながら言う。しかし、男子は「別に良いじゃん」と言って離してくれない。
……誰か、助けて…。
「おいお前。本人が嫌がってんだろ。離してやれ」
義昭はいつの間にか男子の腕を掴んでいた。
「義昭…汚ねぇ手で触んじゃねぇよ」
「は?」
私と義昭は男子の言葉に固まった。男子は私を放し、ケラケラ笑う。
「義昭はいつもそうだ。ずっと孤独で可哀想だよなぁ…なぁ、そこの子、知っていたか?義昭は、俺の学年の嫌われ者なんだぜ?口は悪いし、無表情だしよ」
私はチラリと義昭を見る。義昭は、珍しく表情を崩していた。
「…義昭と同じ学年ですか?」
私が問いかけると、男子は「同じクラス」と微笑んだ。
「…なら、尚更腹が立ちます。私は知っているんです!義昭は口は悪いけど優しい人なんだって!義昭は、困っていたら助けてくれます。義昭はただ感情表現が苦手なだけなんです!私はそんな義昭をかっこいいと思っています」
私はただ思ったことを叫ぶ。義昭は少しうつむいて嬉しそうに微笑んだ。男子は舌打ちをして消えていく。