Starry Night Magic
「現実だよ」
その言葉を聞いた途端に、彼女は嗚咽を漏らした。
次第にそれが大きな声になり、うわああああんと子供のように殆ど泣き叫んだ状態になる。
君は感情の振れ幅が大きい。
通りすぎる人たちが何事かとチラチラと視線を寄越すので、俺は居たたまれなくなって君の顔を俺の胸に押し付けた。
これで多少は吸音されるだろう。
「遅いし……!!ギリギリだし!急だし!色々飛ばしすぎだし!」
俺は小さい子をあやすように、彼女の後頭部をぽんぽんと繰り返し叩く。
「普通付き合おうじゃないの、何でよ、結婚しようって、おかしいじゃん、そんなの心の準備できてないじゃん」
ごめんごめん、俺はひたすら謝り続ける。
こうなった彼女を誰も止めることは出来ない。
「しかも仕事辞めるとか言うし、なんか海外でも雇ってもらえるって自信あるし、外国舐めんなよって感じだし」
最後の方は完全に悪口だけどな……心の中では思いつつも、口ではごめんと言っておく。
「君の元へ行く口実を作るには、結婚するしか無いと思って」
確かに突拍子も無かったかかもしれない。
俺としたことが、君の思考回路がうつってしまったのか。
「いつも私のこと、突拍子も無い突拍子も無いって怒るくせに、自分だって突然じゃん」
君は腕の中からきっと睨みつけて俺を責めた。
別にいつも怒ってる訳では無いんだけどな……そう反論したかったが、論点はそこでは無いことは分かっている。